COLUMN

コンサルタントの独り言3

2018年11月


11月の上旬、僕はJIMTOFに行って参りました。
2年に1度の工作機械見本市だけあって、工作機械メーカー各社の様々な最新機種の展示を一堂に見ることができ、非常に面白かったです。
DMG MORIのブースで大型機械がキビキビと俊敏に動く様などはまさに圧巻で、圧倒されるものがありました。
今回は、特に革新的な発表は無かったように感じましたが、機種の個々の性能は上がっており、使い易さも向上し、業界の日進月歩を肌で感じさせる展示会でした。



一方、もう一つ感じさせられたのが、これらの機械を買わされ続ける限り、町工場は儲からないな、という実感です。
機械の性能が上がれば、それに比例して価格も上がり、それを導入する町工場は利鞘が稼ぎにくくなります。加えて、製造原価に含まれる材料、光熱費等は中長期的には上昇トレンドにあると思います。
受注単価を上げようにも大手最終製品メーカーが牛耳る市場では難しく、逆に、同じ工作機械を持つ競合がいればスグに価格競争に陥ります。
職人のノウハウを機械が取り込み、その分の利鞘を機械メーカーが取り込んでいる構図と言えます。
機械メーカーは売り先が無くなると困りますから、しばらくは生かさず殺さずの価格設定が続くとは思いますが、これでは経営は面白くありません。




大田のものづくりの強みは、
①工場数が多く、
②それぞれに高度な加工ノウハウの蓄積があり、
③さらに、その連携が強い
ことから、「多様な加工法に地域内で対応できること」にあると思います。



多様性、高度なノウハウ、強い連携は強力な武器です。
様々な環境の変化にも柔軟に対応できる、共存共栄の小さなネットワークが多数形成されているわけで、この地域のものづくりの歴史が生んだ大切な資産だと思っています。



話しは少し変わりますが、大田の町工場では、都の支援のもと、セキュリティ強化事業がスタートします。
今後、段階的にですが、よりセキュアな環境でのデータのやり取りが可能になっていきます。
つまり、これまで以上に安心して、頻繁に、簡単に仕事の連携がとれる環境が整っていくことになります。
例えば、これにより町工場の連携・協力をさらに強化すれば、各社が持つリソース(設備・人)の稼働率を上げることが出来るようになります。
小さな町工場がピークに合わせてリソースを揃えればコスト高となります。反対にボトムに合わせれば受注が上向いた際に機会損失を起こしてしまいます。であれば、今まで以上に連携を強化して、それぞれのリソースを融通し合えば稼働率は高まり、単位生産当たりのコストを下げることが出来るようになると思います。また、小規模の多様な事業者が集まることにより、仕事の波も平準化し易くなります。



皆で力を合わせれば、さらに一歩踏み込んだ攻めの戦略も可能になると思います。
皆さんが持つ、これまでに蓄積された加工のノウハウは強力な武器です。
例えば新素材は加工技術の進歩と共に導入が進みます。
どんなに優れた素材も加工ができなければ製品にならないからです。
「強い」けど「加工し易い」というのは相反する性質で矛盾をはらみます。
これを両立させるのが「ノウハウ」だと思います。



昨今はAIなども活用し、新素材の開発スピードを上げようとする取り組みが進みつつあります。今後も新しい素材はどんどん出てくると思います。
ならば、素材メーカーや大学などの研究機関と組み、高い加工ノウハウを持つ複数の大田企業に異なる加工法で新素材の加工にトライして貰い、その結果を解析して最適な加工法を探るといった取り組み(共同研究)は有効だと思います。
新素材が市場に出る際には、我々は既にその加工法を確立しているのですから、これは大いなる強みとなります。
または、工作機械メーカーと組んで、町工場の加工ノウハウを織り込んだ機械を共同開発するのも面白いと思います。
当然ながら、その機械を最も使いこなせるのは我々ですし、メーカー側の一員となって他の地域に販売するという選択肢も出て来るかも知れません。
または、工作機械メーカーに機械の売上に応じた利益分配をして貰うのもアリだと思います。
つまり、ノウハウ分のお金を貰うのです。



面白い仕事には人が集まります。
攻めの姿勢で仕事を面白くし、それによって人を惹きつけ、更なる発展に繋げるのです。



来春以降はこういった仕事で皆さんとご一緒出来ればと思っています。
引き続きよろしくお願いします。

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