COLUMN

ダイソンに学ぶ

2017年04月

皆さんはダイソンをどう思われますか?
ご存知“あの”掃除機のメーカーです。
製品コンセプトやそのPRは非常に良く考えられていて、
強烈なインパクトにより、ここ数年で誰もが知るメーカーになりました。
実際にPRしているほどの機能性や使い易さが伴っているのかは若干あやしいと思っているのですが(笑)、
僕はユーザーでは無いので、ここではコメントを控えます。
会社のことを少し紹介しておくと、
ダイソンは創業者の名前で、英国のメーカー(主力工場はマレーシア)です。
会社は1991年創業で(意外と長い!?)、現在の社員は約7千人、
2016年12月期の簡易キャッシュフロー(EBITDA)ベースの利益は約870億円で前期比4割増の成長企業です。
製品で他に有名なのは「羽の無い扇風機」に、ドライヤーでしょうか。
調べてみると他にめぼしい製品は無いのですが、少ない製品がいずれも強烈なインパクトを放ち、
その形状も相まって店頭でもよく目立つ製品となっています。
製品コンセプトの作り込みとPRに非常に秀でた会社であることは疑いようがありません。


悪く言うつもりはないので、予め断っておきますが、
例えば、“あの”掃除機は
既存の技術をコンパクトに組み合わせただけの掃除機と言ってしまえば、ただそれだけです。
原理は製材所などで昔から使われているサイクロンと呼ばれる紛体分離機と同じです。
ポイ捨てできる袋付きの掃除機の方がいいと思われる方は沢山いらっしゃると思います。
「羽の無い扇風機」も東芝が随分前に特許を持っていたようで、
ダイソンはそのこと自体の特許は「新規性が無い」として取得できていません。
そもそも羽が無いわけではなく、羽はボディー内に格納されています。
安い扇風機で十分と考える人もこれまた沢山いらっしゃるでしょう。
評価の仕方は好みもありますので、人それぞれでいいと思います。


一方、コンセプトを練り上げ、製品に纏め上げるための努力、
技術開発へのこだわりは相当なものです。
同社は売上の約15%を開発投資に回しているそうで、
例えば、スリムな本体に収納するためには、モーターは小型・高性能化が必要でしょうし、
騒音を抑えるための設計も重要でしょう。
また、効率化も重要なファクターですから、空気の流れもきちんと押さえた設計が必要となります。
その結果、実現されるこだわりの形状は、これまでの製品にない強みをもたらします。
例えば、扇風機は一旦空気を集める仕組みのため、フィルターを設置することで空気清浄機にもなります。
空気の流路にヒーターを設置すれば扇風機が温風機に早変わりです。


さて、ここで考えなければいけないのは、
例えば我々も日々の努力により、高精度化、微細化、高効率化を実現していますが、
それを価格に転嫁または転化できているか、ということです。
ともすると、効率化の結果、工賃を安く見積もられて買いたたかれたり、
または意味も無く、「前年比○%のコストダウン」
といったルールを押しつけられてはいないでしょうか?


ダイソンは強いインパクトを生み出す製品コンセプトと明確なPR力、
そして、技術を“自社製品”に統合する力により、高い収益を生んでいます。
画期的と呼ばれる製品に日本の部品が多用されている例は多くありますが、
“画期的な製品”と呼ばれる日本製品は残念ながら多くありません。
Made in JAPANは高品質の代名詞ではありますが、残念ながら、
革新的とか画期的を示すような前向きな代名詞にはなっていません。
優れた技術力がありながら、実にもったいない話です。


わずか26年前、我々大田区企業と変わらぬ規模の会社であったダイソンは、
わずか26年で今の規模に成長しているのです。
彼らが今後も同じ成長を遂げるかは、激しい競争社会ですから分かりませんが、
良いところは貪欲に学ぶべきと思います。


僕が自社で進める製品化案件では、
開発力とPR力がいつもネックになります。(あと資金力もありませんが・・・。)
コンセプトやアイデアは貧弱ではありますが何とかなるのですが、
ダイソンのように技術開発力を伴った製品への統合力が無いのです。
ただ、昔は小さかったダイソンが優秀な人を集め、
それを活用して“思い”を製品として実現していった経緯や仕組みは大いに参考になります。
僕は、自社や大田区企業に足りない部分を、
上手くダイソンから吸収したいと思いながらダイソンを見ているのです。

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