COLUMN

未来志向の経営を

2015年11月

11月の上旬、僕は茨城にある水産工学研究所(水工研)に行って来ました。
水工研は、海に関わる様々な研究を行っている水産庁系の研究機関です。
皆さんは船の模型を水路に走らせ、波や水の抵抗を測る実験を見たことがありませんか?
まさにその実験設備がそこにはありました。水産庁系なので対象は漁船ですが。
他には、様々な波を起こして船が転覆しないか実験を行う巨大プールや、海底の地形を再現した港湾のミニチュアを作り、
防波堤の高さや設置方向の検証を行う遠浅の巨大プールなど、どれもスケールが大きく、見応えのある設備群でした。
余談ですが、韓国のセウォル号の事故の再現実験も行ったことがあるそうです。
技術者の地道な努力のお陰で、日本の海の安全が守られているのだと、つくづく感じました。


さて、前置きが長くなりましたが、僕はここに遊びに行ったわけではありません。
将来の事業ネタを探しに行ったのです。(笑)


水工研での今後の開発のトレンドは、「省人化」と「自動化」でした。
ちなみに、人減らすのではなく、人減っているのです。
実は大手自動車メーカーでも漁船の自動化に取り組む企業が出てきています。
彼らからしてみれば、数あるプロジェクトの中のひとつでしかないとは思いますが、
日本の産業の優等生である彼らが取り組むプロジェクトは、我々としてもウォッチしていく必要があると思います。


今後、日本の人口は必ず減り続けます。子供が少ないのですから当然です。
僕の学年(現在41才)は1学年で200万人強ですが、平成26年生まれの0歳児は100万人とちょっとです。
ちなみに、僕の親の学年(現在65才)は220万人強です。
11歳児までは100万人台で、12歳児でようやく110万人を超え、20歳で120万人強です。
つまり、今後20年間は、就労人口は劇的に減り続けることが確定しており、人口も間違いなく減り続けます。
出生率が2になったところで、親の絶対数が少ないので人口は減り続けるのです。


かなり乱暴な計算ですが、1学年200万人の親が居て出生率2で維持されていた人口が今の日本の人口だとすると、
100万人の親が居て、その出生率が仮に2(平成26年の実績は1.42ですが・・・)となった場合の人口は、
今の半分の6千万人に収束していくことになります。
国などの推計値が色々と出されていますが、およそ信頼できる数字ではありません。
そんな数字を出すことに人手と税金を使うくらいなら、少なくなる人口を前提に、
社会システムをどう適合させていくかに頭を使った方がよほど建設的だと思います。


いずれにしても、僕らは人口減を前提に、経営を考え、かじ取りをしなければなりません。
明日何が起こるかは分かりませんが、中長期的にどういったトレンドで世の中が動くかを推測することは、実は難しいことではありません。
少なくとも、人口がある日突然増えたり減ったりすることは絶対にありません。


ところで、僕は日本の人口はもう少し減った方がいいと考えています。
国土は広くありませんし、食糧の自給率は4割、エネルギー自給率は5%です。
世界の途上国が豊かになり、民主化も進めば、今ほど簡単に足りないものをお金で買うことは出来なくなります。


一方で、人口が減れば国内で必要となる食糧、資源、エネルギーは減ります。
国力がある今の内に、少ない人口で効率的に生産を行うシステムを作り上げるべきです。
少ない人口で無駄を無くして生産力を上げられれば、需給は改善する可能性があります。
少なくとも食糧に関しては、今でも3割の食糧は捨てられていますし、
高齢者はそもそも必要とするエネルギーが少ないので(統計ではすでにその傾向が表れています)、自給率は劇的に改善できる可能性があります。
GDPが何位になろうが、一人当たりの生産性が高く、
必要なモノを必要な分だけ買うことが出来る十分な購買余力があれば、何の問題も無いと僕は思います。


ただ、農漁業の生産の現場では、人が減っています。少子化もあるのでしょうが、それ以上に、人気の無さが問題です。
平均的には収入が低く、拘束時間も長い「3K」の職場と言えると思います。
若者が敬遠するのも無理はありませんが、その一方で、しっかり経営ができている優良な生産者が多く存在しているのも事実です。


就労人口が減っているのであれば、機械化を進め、労働負荷を下げつつ生産性を上げるのが一つの解決策となり得ます。
僕が自身の会社で農漁業にフォーカスした製品の開発と販売に特化しているのはこのためです。
将来何が起こるのか?それを解決する技術は何か?それにどう貢献することができるのか?
こういったことを普段から考えていると、今やるべきことが何なのかの判断が付き易くなります。
事業のリソース(ヒト、カネ、モノ)は有限ですから、フォーカスする必要があります。そこに知恵を絞る必要があるのです。


お上に任せるとスグに補助金の話になってしまいます。(苦笑)
サッカーで言えば、全国の小中学校に芝のサッカー場を整備し、
サッカー部員に奨励金を払ってサッカーを強化しようとするようなやり方でしょうか?
それよりもJリーグを作り、スター選手を10人生み出す方がサッカーの強化にはよほど効果的です。
子供たちは“憧れて”スターを目指すのです。事実、人口は減っていますが、サッカーは確実に強くなったと思います。
ラグビーも結果を残したので、今では人気スポーツです。


わが社がスター企業になれるかどうかは分かりませんが(汗)、めちゃくちゃ成功したいですね。
皆が目指したくなるような成功事例が生まれることが、次世代の産業を作るきっかけになると思います。
明るい未来をめざし、知恵を絞って突っ走りましょう!

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