COLUMN

“便利”は人のためになるのか？

先日、随分久しぶりにプラモデルを作りました。バンダイの初代ガンダム（分からない方すみません！人型のロボットのプラモデルです）、1／144スケールの「リアルグレード」です。最近は同じガンダムでもサイズや精度に応じてノーマル、ハイ、マスター、パーフェクトまで様々な階級分けがされています。ちなみに私の作った「リアルグレード」は中級くらいの階級です。
ガンダムは生誕から30年が経ち、プラモデルもとても進化しています。色を塗らなくても十分な程、細かく色分けされたパーツが用意されています。部品点数は多くなるのですが、接着剤は不要で、一部の構造はどうやって作っているかは分かりませんが、既に組み上げられていたりして、組み立てはさほど難しくありません。昔はシンナーの臭いが部屋中に充満し、寒い冬でも部屋の窓を開けながら組み立てていたことを思うと、隔世の感があります。

はっきり言って良くできています。関節の稼動範囲も広いし、原作のアニメ以上にフォルムがカッコイイのも確かです。
ただ、子供の頃、下手クソなりに色を塗ったり、はみ出した接着剤を拭き取ったりしながら組み上げた不恰好なプラモデルの方が、愛着が沸いたし、作っていても面白かったと感じてしまいます。
上手くなればそれなりに仕上がり、それが楽しかったりして、色々と工夫して取り組んだものです。今はそれが無く、誰が作っても一定のクオリティに仕上がるようになってしまいました。
それでいいのだろうか？と思ってしまうのはオジサンの発想でしょうか？めげずにオジサンの論法を続けてみたいと思います。（笑）
ふと、周りを見渡せば中身の分からないモノが溢れています。
昔のおもちゃは壊れればドライバー１本あれば簡単に分解ができ、電源とモーター、それを繋ぐスイッチとギアボックスなどがあり、見た目に構造が分かりました。
今は動くおもちゃでも間に電子回路が入り、どうやっておもちゃが動いているのかは子供には全く分からなくなってしまっています。ゲーム機なんてさらに理解不能です。
身の回りの道具も様変わりしました。
皆さんは携帯電話を分解したことがありますか？そもそも分解するようには出来ていません。殆どの機種には外部にネジすら付いていない筈です。壊れたらショップに持っていってクレームをつけ（笑）、修理代をまけさせようとは思いますが、自分で直そうとはこれっぽっちも思いません。ほぼ確実に無理だから。。。
一方、預けた携帯は修理をするのではなく、故障部分を含むユニットをカセットのごとく取り替えて戻ってきます。それが効率的なやり方だからです。
車も然りです。昔は調子が悪くなると、素人なりに少し部品をいじってみたりしました。いじることによってエンジンの構造を少なからず理解する機会にもなりましたし、本を買って勉強したりもしました。今は電子部品が多くなり、構造が分かりにくくなっています。
傘は昔、骨が折れたりしても直して使いました。子供のズボンは膝をつぎはぎしたりして履きました。最近そんな風景をとんと見かけません。
便利になるのは良いことですが、実はムダが多かったり、なによりも人間が頭を使わなくなるのは如何なものかと思ってしまいます。

少しでも楽なモノを、少しでもかっこいいモノを、少しでも人より良いモノを、少しでも安いモノを欲することは、競争を通じて社会や技術の発展に繋がり、その恩恵を享受することができるようになりますが、果たして追求した結果に得たモノは人の生活を豊かにするのでしょうか？
携帯やPC、インターネットは確かに通信や情報処理を飛躍的に便利にしましたが、競争が激化して、休日も安心して休みきることが出来なくなりました。
相手よりも良い機械を使うことは重要ですが、大量に買い換えることは地球環境や経営、従業員にとって優しいことなのかと、時々疑問に思うこともあります。ライバルと同じ機械を買っても競争は以前より激化し、機械の購入額ばかりが増え、製品価格は低下し、消耗戦に陥ります。いったい誰が得をするのでしょうか？
世の中が便利になるのは大いに結構なのですが、たまにはアクセルを緩めてゆっくりと外の風景を眺める余裕を持ちたいものです。アクセルをべた踏みした成長では道の途中でガス欠か事故を起こして立ち往生してしまいます。
ビジネスも、社会も、人生も継続性が大切です。目一杯がんばるのも大切ですが、途中で息切れしないよう気をつけて生きたいものです。人の頭の容量も人生も有限です。使い残しの無いようにしたいものです。

「そんなこと言っても、競争相手がいるんだからしょうがないじゃないか」といった声が聞こえて来そうです。次回はそのあたりについて思っていることを書きたいと思います。予め断っておきますが結論はありませんので、悪しからず。