COLUMN

日本のものづくりの未来

2011年03月

早いもので、この「独り言」も、今回が最終回となりました。最後は日本のものづくりの未来について述べてみたいと思います。
僕は未来を考えるときに、まず大きな流れを考えます。大きな流れとは、例えば日本で言えば少子高齢化、人口減少、海外で言えば、人口爆発、食料難、資源の減少と高騰などです。これらは必ず起きる未来であって、余程の天変地異でもない限り変わることはないでしょう。
縮小する国内市場ばかりを見ていると見誤るのですが、世界の多くの国では人口は増加し、経済も成長しています。一方で地球の環境はその伸びに、もはや対応できなくなりつつあるのです。
漠とした表現になってしまいますが、上述のような状況では、省エネ技術や省資源技術は必ず世の役に立ちます。また、食料ならば生産性を向上させる技術が必ず役に立ちます。
これらは単に役に立つという話ではなく、“今後益々重要になる”=市場が成長するということを意味します。
製品の小型化や製造工程の省エネ・省資源化などは日本のモノづくりの現場が得意とする分野であり、大田区の技術や、蓄積したノウハウを元にした創意工夫が大いに貢献できる分野だと思います。

少し脱線しますが、今起きているどんな事象も、少なくともモノづくりの分野においては一朝一夕では起きていません。例えば、最近は「PCの時代は終わり、タブレットPCやスマートフォンの時代に突入した」と言われますが、今思い起こせば随分前からスマートフォンというものはありましたし、もっと言えばiPodの前進となるミュージックプレイヤーは昭和の時代からありました。小型の液晶パネルやタッチパネル、ネットによる音楽や映像の配信技術といった要素技術もiPodが流行るかなり前から存在していました。
そして、音楽を聴きたいとか、携帯して持ち歩きたいといったニーズも、昔から大きくは変わっていないと思います。
読みきれないのは個々別々に熟成してきた技術が、いつ融合してブレイクするかであって、ある日突然に何かが生まれるわけではありません。(何らブレイクしない技術も沢山ありますが。。。)

大事なのは大きな流れを読み、身の丈にあったリスクを取って、先に動く=提案することです。ニーズがあるからといって競合の後塵を拝しながらの市場参入ではうまみがありませんし、価格競争で疲弊するだけだと思います。
先に動くには「マーケティング」と「営業力」が重要になります。市場のニーズを読み誤っては本当に必要なモノは出来ませんし、相手を納得させることができなければモノは売れません。
最も身近で簡単なマーケティングは顧客の声を聞いてみることです。既存の顧客に拘らず展示会などでブースに来る人や、同業の仲間の中にもヒントを持っている人が居るかも知れません。まずはスグにできることからやってみては如何でしょうか?
また、モノづくりにおいては1社で対応できない場合には横の連携が必要だと思います。
過去においては多くの連携プロジェクトがうまく行かなかったようですが、まず会社が集まって、次に何を作るか考えるといった「プロダクトアウト型」の連携では上手く行かないのだと思います。
本来は「ニーズ志向型」の連携であるべきで、つまりはマーケットのニーズに合せて最適なチームを組む形式を目指すべきだと思います。連携の仕方にもマーケティングの思考が重要だと思います。

それと、もうひとつ重要な点として、「リスクを最小化すること」が挙げられます。それには資本力のある大手企業と共同開発をするとか、助成金を獲得しながら大学が持つ技術の実用化を担うなどの手法があると思います。これは決して開発の下請けとしてではなく、こちらが持つ高度な製造のノウハウと、大手企業が持つ資本力をトレードする、対等なgive & takeの取引として行うべきです。
これらの実現には、連携の取り纏めや外部との折衝ができる商社のような組織があるいは必要かも知れません。

経営とは未来志向であるべきです。大きな流れを見据え、自社の強みを生かし、顧客を巻き込むなどしてリスクを最小化しつつ、新たな事業を開拓していくことは今後益々重要になってくると思います。
既存の取引が減少する局面においては、未来は自らの努力と意志で獲得しなければなりません。高度に蓄積された大田のモノづくりの技やノウハウは必ず世の役に立つものであると確信しています。

僕も微力ながら日本の製造業の未来のためにできることをやり続けていこうと思っています。また機会があれば僕なりの考えを述べてみたいと思います。
「独り言」に最後までお付き合いを頂き、誠にありがとうございました。

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